本書は、バンドデシネという媒体が持つ芸術的な可能性を極限まで追求した、静謐で詩的な傑作です。2017年にアングレーム国際漫画祭で最高賞(金の大賞)を受賞したエリック・ランベが、その比類なき描線で描き出したのは、ある高貴な悲劇と再生の物語です。
最大の特徴は、エリック・ランベの独創的な視覚表現にあります。Bic(ビック)のボールペンや色鉛筆を駆使し、無数のハッチング(細い線の重なり)によって形作られる画面は、まるで霧の中に浮かび上がる幻想のような質感を湛えています。光と影が繊細に溶け合うその描写は、具体的な形を提示する以上に、そこにある空気の密度や、登場人物が抱える心の揺らぎをダイレクトに読者の感性に訴えかけます。
物語は、カティア・アンゲルバッシュによる象徴的なテキストと呼応しながら展開します。「王の息子」という古典的なモチーフを借りながらも、そこで描かれるのは権力闘争ではなく、孤独、欠落、そして自己を見つめ直すための内省的な旅路です。余白を大胆に活かした構成は、読者に深い沈黙を強いると同時に、描かれない行間に自分自身の感情を投影させるための広大なスペースを与えてくれています。
Le fils du roi
Eric Lambé, Cathia Engelbach
Éditeur : Fremok Editions
Date de publication : 3 octobre 2025
Édition : Illustrated
Langue : Français
Nombre de pages de l'édition imprimée : 96 pages
ISBN-10 : 2390220592
ISBN-13 : 978-2390220596
Dimensions : 30.6 x 1.7 x 30.6 cm